ここまで有料老人ホームにおけるサービスや費用について確認しました。ここでは、ホーム選びをする前に、本人や家族がどのようなことに注意したらよいのかをご紹介します。
高齢期になると、急にホーム等を探さなければならないときがあります。その際にあわてないために自身の状況や家族が考えておかねばならないことについて事前に整理をしておくことが大切です。
本人の状況をチェックしてみましょう
まずは、現在の本人の状況をチェックしてみましょう。
- □一日に誰とも会話しない日がある
- □お風呂に入らない日が多い
- □日々の暮らしに不安を覚える
- □近隣の方から気遣われることが増えてきた
- □物の片付け、食事の準備等に支障が出てきた
- □要介護認定を受け、訪問介護等の居宅サービスを利用している
- □認知症状が出てきた
チェックをしてみて、今の環境で生活を続けていくのは難しい状況かもしれないと感じた場合は、生活を支援してもらうサービスを受けながら自宅で暮らす、あるいは、ホームへの入居を決断する時期かもしれません。
本人の希望を聞いておきましょう
本人は家族へ自身の希望を伝え、家族は本人の希望を聞いておきましょう。事前に本人、家族の思いを話し合っておくことは、お互いの心の準備のためにも大切なことです。
- □自分でホームを選び、元気なうちに入居したい。
- □自分でホームを選び、介護が必要になったら入居したい。それまでは生活の支援や介護サービス等を受けながら自宅で生活したい。
- □自身の健康状態等によって、家族の選択にまかせたい。
住み慣れた環境が変わるということは、本人の大きなストレスにもなりかねません。地域の特性(気候・ことば・味・風習等)も重要な検討要素です。ホーム等への入居を考えている場合、どのような場所を希望するかを確認しておきましょう。
- □自宅を中心とした場所を選択
- □自然・景色が豊かな場所
- □日本全国どこでもよい
- □家族が通いやすい場所を選択
- □交通の便、公共施設の多さ等、利便性のよい場所
- □知らない所に住んでみたい
ホーム等の入居を考えている場合は、一人か二人(夫婦等)か、また健康状態等によっても選ぶホームが違ってきます。次のこともチェックしてみましょう。
【一人入居】
□自分のことは自分でできる・・・
入居時自立の方が対象のホーム
□要介護認定を受けている・・・・
入居時要支援・要介護の方が対象のホーム
【二人入居】
□二人とも自立・・・・・・・・・
入居時自立の方が対象のホーム
□一人は自立・一人は要介護・・・
入居時自立・要支援・要介護の方が対象のホーム
同居が可能か
別々の居室(一般居室+介護居室)か
□二人とも要介護・・・・・・・・
入居時要支援・要介護の方が対象のホーム
二人で同じ居室(親族用の介護居室)に入居
別々の居室(介護居室+介護居室)
どのようなサービスに重点をおきますか
ホームに入居する場合、どのようなサービスを求めるのか、またホームの支援体制はどのようになっているのか、チェックしてみましょう。
- □日常の安否確認や見守り
- □栄養やバランス等に配慮した食事の提供や治療食への対応
- □一人ひとりの希望にあわせた生活支援サービスの提供
- □レクリエーション等を通じた生活機能の向上、介護予防
- □職員の入居者や家族への対応や態度
- □医療機関との連携体制
- □家族等への手厚い連絡や報告
- □個人情報の取り扱いやプライバシーへの配慮
- □ホーム運営に関する入居者や家族の意見反映の機会や仕組み
(要介護で入居する場合) - □職員数や専門職の配置等の手厚い職員体制
- □訪問介護等の外部の介護サービス事業所が提供するサービス内容や連携体制
- □医療依存度が高い方(胃ろう、在宅酸素等)の受け入れ体制
- □通院時の付添いや外出支援
- □一人ひとりの希望にあわせた介護サービスの提供
- □認知症ケアへの取組み
- □服薬管理や医療支援が必要な方に対する処置や対応
- □終末期の看取りへの取組み
家族で共通認識を持ちましょう
「家族間で共通認識を持つこと」がとても重要なポイントです。本人の希望を踏まえて親子・兄弟姉妹間で十分に冷静に話し合い、本人のためにどうすることが最善なのか、皆が納得し、協力していくことが必要です。これは、その後の家族間におけるトラブルの回避につながる大切なことです。
- □本人の現状について認識し、話し合っている
- □ホームに入居することが関係者の総意である
- □選択した結果は関係者間で合意している
- □身元引受人を誰とするのか、話し合っている
- □日常的な訪問やホームとのやりとりを行う人間を決めている
- □金銭管理をどのようにするのか話し合っている
※ホームに入居する場合、身元引受人をたてることを条件とするホームがほとんどです。どうしても身元引受人をたてられない場合には、成年後見制度の利用やその他の方法で対応できるホームもありますので、希望のホームへ相談してみるとよいでしょう。
費用について考えましょう
家族であっても、本人の経済状態を把握するのは案外難しいものです。これからの生活費が本人の資産・年金等ですべて賄われるのか、あるいは家族の負担も必要になるのかは客観的に把握しておきましょう。家族の負担が必要な場合は、その負担が一時的なのか、または長期にわたり必要なのかどうかも合わせて確認しておきましょう。無理のない費用負担が絶対条件となります。
「今の環境でいつまで生活できるのか」「どこで、どんなサービスを受けながら暮らすのか」「日々の生活の場を変更するという大きな決断はいつの時点で行うのがいいのか」等々、悩みは尽きません。ぜひ、このチェックポイントを参考に、家族と一緒に高齢期の生活について、検討する時間をとってください。