有料老人ホームでの介護サービスが、介護保険の給付対象となるためには、都道府県知事等から「特定施設入居者生活介護(以下「特定施設」と略します。)」の事業者指定を受けることが必要です。 この指定を受けるためには、国の定める基準を満たすことが必要です。
「特定施設」の指定基準の内容について整理してみましょう。
指定基準は大きくは、次の項目から構成されています。
- 基本方針
- 人員に関する基準
- 設備に関する基準
- 運営に関する基準
Q1:「基本方針」ではどんなことが求められていますか?
A1:まず、「利用者の意思と人格を尊重して、常に利用者の立場に立ったサービスの提供に努める」ことが求められています。
また、「地域との結び付きを重視し、市町村や他の事業者、その他の保健医療や福祉の関係者との連携に努める」ともされています。 さらに、介護の提供により「利用者が自分の能力に応じて自立して生活を営むことができるようにする」ことが基本とされています。
Q2:「人員に関する基準」とは、職員の配置の基準ですか?
A2:「人員に関する基準」とは職員の配置基準です。「特定施設」では、次のような職種・人数の職員が必要とされています。
生活相談員
介護保険利用者100人あたり1人以上
計画作成担当者
1人以上
機能訓練指導員
1人以上
介護職員、看護職員
利用者と看護・介護職員の割合が3:1以上
管理者
1人以上
※介護予防特定施設(要支援)の場合、別途基準あり
Q3:自分が希望するホームの職員の配置は何を見ればわかりますか。
A3:「運営規程」や「重要事項説明書」で、わかりやすく情報提供し、利用に先立って説明することが義務付けられています。
Q4:「設備に関する基準」とは?
A4:「設備に関する基準」では居室や、そのほか必要な設備について定められています。
「特定施設」は、特別養護老人ホーム等とはちがい、在宅での介護とされています。
一般居室で介護を行うことも認められています。
また、はじめから「介護居室」があればそこが中心となります。この場合「個室」「プライバシーに配慮」等の基準があります。
Q5:どのような設備が必要とされていますか。
A5:居室のほかに次のような共用施設が必要とされています。
- 非常用設備を備えたトイレ
- 食堂
- 身体機能低下に配慮した浴室
Q6:「一時介護室」は居室とどうちがうのですか。
A6:指定基準上では「利用者を一時的に移して介護を行う」ための部屋とされています。居室がすべて個室の場合は、設置する必要はありません。
Q7:ホームの設備や居室の戸数や広さを知りたいのですが。
A7:それぞれの面積などを「運営規程」や「重要事項説明書」で情報提供し、利用者が内容を確認できるようにすることが求められています。
Q8:「運営に関する基準」とは何ですか。
A8:介護保険の指定事業者として守るべき義務や努力目標について、きめ細かく定められています。
Q9:どのような義務があるのですか。
A9:「特定施設」での主な「運営に関する基準」上の義務や規定をご紹介すると次のようなものです。
契約締結の義務と重要事項説明の義務
利用に際しては、必ず文書で契約をかわす。また契約に際しては、利用者にとり重要な事項(ホームや事業者の概要、職員体制や設備内容、料金や改定方法、利用の留意事項等)を記載した文書を交付して説明を行う。
苦情処理
利用者の苦情に適確に対応する体制を整える。また、苦情による市町村等の調査に協力し、また改善の指導があればこれに従う。
秘密保持の義務
業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を不当に漏らさない。
身体的拘束等の禁止
緊急やむを得ない場合以外は、身体的拘束や行動を制限しない。
ホーム側からの介護の提供拒否の禁止
正当な理由がないのに、保険給付としての介護の提供を拒めない。
利用者の希望による他の介護サービス利用
入居者が「ホームでなく、他の事業者のサービスを利用したい」と希望した場合、ホームの側から拒否できない。(ただし、この場合、部分的に「特定施設」の給付は受けられません。)
※この他にも、衛生管理や緊急時の対応など、様々な規定があります。