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法定相続情報証明制度について~暮らしに役立つ情報~

暮らしに役立つ情報

法定相続情報証明制度

相続手続きを行うにあたっては、様々な書類を金融機関などに提出しなければなりません。「法定相続情報証明制度」を利用することで、その手続きを簡素化することができます。「法定相続情報証明制度」について日本司法書士会連合会に解説いただきます。

▶1.はじめに

人が亡くなると、遺された親族に相続が発生します。亡くなった人(被相続人)が預貯金や不動産などの資産を持っていた場合、相続手続のため、相続に関する戸籍謄本などをセットにして関係先毎に提出します。この戸籍謄本などの多くの関係書類を収集し提出する負担を軽減するのが法定相続情報証明制度です。本制度を利用することで、相続の手続をより早く、より楽に、そして費用を節約することができます。

▶2.制度創設の背景

本制度は、2017(平成29)年5月29日に運用が始まりました。「所有者不明土地問題」や「空き家問題」という言葉を目にしたりお聞きになったことはないでしょうか。近年、土地や建物の相続登記がなされないまま不動産が放置され、所有者不明になっているケースが目立つようになりました。災害復興工事や道路などのインフラ整備事業、まちづくりなどの公共事業の妨げに繋がり社会問題になっています。相続登記未了がこれら問題の一因となっており、法務省においても相続登記未了解消に向けた様々な施策が実施されている中、相続登記促進の一環として本制度が創設されました。

▶3.制度の概要

相続の場面では、戸籍関係書類一式が必要です。原則として、相続手続の提出先(預貯金では各金融機関、不動産名義変更手続では法務局、相続税申告では税務署、遺族年金等請求では年金事務所)毎に戸籍関係書類一式を準備の上で提出します。3(2)に示した【記載例】のような家族構成であれば、戸籍関係書類一式は1セットで8通程度、戸籍取得実費は6千円程度と想定します。これを相続手続が必要となる提出先が5件あるとすると、合計3万円の費用がかかります。戸籍関係書類一式を1セットだけ取得し、提出先毎に順番に手続をすることも可能ですが、ひとつの提出先での手続が終わらないと、次の提出先の手続に進めません。戸籍関係書類一式の確認のため提出先毎で数日間を要することも珍しくありませんので、それだけ多くの時間がかかってしまいます。

 法定相続情報証明制度を利用すれば、戸籍関係書類一式が1セット必要ですが、法務局の登記官が、提出された書類の内容を審査した、法務局の認証文が入った「法定相続情報一覧図の写し」の交付を無料で受けることができます。この「法定相続情報一覧図の写し」は、登記官がその内容を確認していますので、相続手続の関係先担当者は、戸籍関係書類一式に基づく相続関係の確認をする手間が省けます。以後、戸籍関係書類一式の書類の束に代え、「法定相続情報一覧図の写し」一枚でもって手続を進めることができます。「法定相続情報一覧図の写し」を必要な通数を取得しておけば、相続手続を同時並行で進めることができます。手続をより早く、より楽に、そして費用を節約しながら進めることができるわけです。

▶4.手続利用の詳細

(1)市区町村窓口で戸籍関係書類を収集

 戸籍関係では、次の書類が必要です。

①被相続人の戸除籍謄本(出生から死亡まで連続した戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍)

②被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票の除票)

③相続人全員の現在の戸籍謄抄本(証明日は被相続人死亡日以後のもの)

④申出人(相続人代表で本手続を進める人)の住所氏名を確認できる公的書類

①②③では、戸籍は被相続人の本籍地の市区町村役場で取得しますが、転籍や婚姻等で本籍地を移動している  場合は、転籍先等の各本籍地の市区町村役場で取得します。各役所の窓口は勿論、郵送でも取得することができます。マイナンバーカードがあれば、コンビニエンスストアの端末で交付サービスを提供している市区町村もあります。

④は、住民票の写しほか、運転免許証やマイナンバーカードの表裏両面のコピーに申出人が原本証明し記名したものも利用可能です。

(2)法定相続情報一覧図の作成

(1)で収集した戸籍等の記載に基づき、法定相続情報一覧図を作成します。この一覧図には、被相続人の氏名、最後の住所、最後の本籍、生年月日、死亡年月日、そして相続人の続柄、氏名、住所、生年月日の情報を記載します。【記載例参照】

【記載例】A4サイズの白い紙に記載。手書きでも ”明瞭に判読” できるものであれば可。

 

留意点

 ☑ 被相続人の最後の本籍、相続人の住所の記載は任意。

 ☑ 一人の被相続人毎に作成(数次相続が発生している場合)。

 ☑ 提出先によって必要となる記載事項がある。

(3)申出書の記入、登記所へ申請

申出書に必要事項を記入し、(1)(2)で用意し作成した書類と合わせて管轄する法務局へ提出します。管轄法務局は、次のいずれかを選択できます。

 ①被相続人の死亡時本籍地

 ②被相続人の最後の住所地

 ③申出人の住所地

 ④被相続人名義の不動産所在地

申出をすることができるのは、被相続人の相続人です。代理人に依頼することができ、代理人となることができるのは、親族をはじめとして、司法書士・弁護士・税理士等の資格者でも可能です。また、申出は法務局窓口をはじめ郵送でも可能です。

【申出書の様式】 出典:法務局ホームページ

(4確認・交付

法務局の登記官が関係書類を審査・確認し、「法定相続情報一覧図」が法務局に5年間保管され、偽造防止措置を施した専用紙に認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」の交付を無料で受けることができます。なお、(1)で提出した戸籍関係書類は、申出人へ返却されます。この審査には数日間かかります。

一旦法定相続情報証明制度を利用した場合、保管期間5年間は「法定相続情報一覧図の写し」の再交付を受けることができます。ただし、再交付の申出は、当初申出をした申出人に限られます。

▶5.まとめ

相続手続は、誰にでも起こりうる手続です。私たち司法書士は、日々現場で相続手続の当事者から依頼を受けておりますが、戸籍関係書類の収集が負担に感じられることを目の当たりにしています。また、遺産として預貯金等の金融機関が複数ある場合や、不動産、株式等の有価証券などがある場合は、複数の提出先毎に対して戸籍関係書類が必要となるため、費用や時間の負担がかかります。これを解消するのが本制度です。運用から5年を経過し、利用できる手続先も徐々に増えてきて、制度が浸透してきていることを実感します。読者の皆様も、手続の迅速化、効率化、費用節約といったメリットを活かし、本制度の利用を検討されては如何でしょうか。ご自身の手続に利用すべきか判断に迷われる場合や、使い方がわからない場合などは司法書士等に相談してみましょう。

 ~プロフィール~

日本司法書士会連合会

日本司法書士会連合会は、司法書士法によって定められた団体で、「司法書士会の会員の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、司法書士会及びその会員の指導及び連絡に関する事務を行い、並びに司法書士の登録に関する事務を行うことを目的(司法書士法第62条)」としています。

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