(ご家族からの質問)
父が有料老人ホームを退居することになった。ホームからは、入居者の負担として居室のクリーニング代と消毒費用を敷金から差し引くと言われたが、具体的な費用については提示されていない。なお、契約書には原状回復について、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)に基づいて原状回復する」という内容になっている。この場合、クリーニング代と消毒費用は支払わなければならないのか。
≪相談者に対する苦情対応委員会のコメント≫
契約書にクリーニング代と消毒費用の支払を求める規程がなく、特約も結んでいないのであれば、クリーニング代と消毒費用を支払う必要はありません。特約があるかを確認してください。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」では、居室のクリーニング代などについて、通常の使用を超えた使用がなく、また故意または過失による損耗でなく、特約も結んでいないのであれば、支払う必要はない(事業者側の負担)ものと考えられます。
~入居を検討している方へ~≪トラブル回避のためのチェックポイント≫
契約前に原状回復に関する既定を確認してください。また、通常損耗を入居者に負担させる特約が定めてある場合には、負担する費用の詳細などが具体的に記載されているかご家族とも確認してください。
(参考)
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のQ&A
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000024.html
民法
(賃借人の原状回復義務)
第621条
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
公益社団法人全国有料老人ホーム協会 有料老人ホーム標準入居契約書(6 訂版)
(明渡し時の原状回復)
第28条 入居者又は身元引受人等は、第25条第二号又は第三号により本契約が終了した場合には、直ちに居室を明け渡すこととします。また、同条第一号により本契約が終了した場合には、契約終了日から起算して30日以内に居室を明け渡すこととします。
2 入居者又は身元引受人等は、前項の明渡しの際に、通常の使用によって生じた居室の損耗、並びに居室・設備の経年変化による損耗を除き、居室を原状回復しなければなりません。
3 設置者、及び入居者又は身元引受人等は、居室の明渡し時において、契約時に特約を定めた場合は当該特約を含め、別表第(6)の規定に基づき入居者が行う原状回復の内容及び方法について協議するものとします。
賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版(国土交通省)
別表第5を参照
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html