〇最期の願いに寄り添う・・介護現場の覚悟・・
人生の最期は命が終わるとき、死に際、とされています。命が終わるとき、できるだけ本人の希望に添うようにと周りの人は考えますが、その希望が実際に叶えられるかについては、おかれている環境、医療や介護のつながりもあるため、現実的に可能かどうかは、単純に答えが見つかるわけではありません。その方の状態によってはある程度予測される場合もありますが、急変するなど人の死は突然やってくる場合もあり、その最期の時間は日中とは限りません。また、その人の宗教的な問題もあります。その中で、ご入居者、ご家族、ホームの職員が連携しながら、ご入居者が望む最期を迎えられるよう、ホームでは日々試行錯誤しています。
今回はそうした一例をご紹介します。
・最期にお風呂に入りたい。
この希望が実際にあった場合、いざお風呂という時を迎えた場合、体力や気力も残っていない場合もあります。お湯の温度もどれくらいが適温か、通常よりもぬるま湯の方が良いのか、本人の希望なのか、家族の希望なのかによっても対応が異なります。
・最後にお酒を飲みたい。
唇を湿らす程度の水分補給は可能ですが、実際にお酒を飲んでいただくとなると、介護現場は相当な覚悟が必要です。なかには、お酒がとても好きだった方が、自分の死期を感じて所望し、家族が飲ませたところ、「こんな不味い飲み物だったとは・・・」という話もありますが、ご本人としては希望が叶ったという満足感につながったのかもしれません。
・トロミを入れないでコーヒーを飲みたい。
介護の現場としては安全第一を考えて、コーヒーゼリーを代替として出すという選択肢が考えられます。嗅覚が残されているならば、コーヒーの香りを醸し出す装置で香りを漂わせると、雰囲気的にはまさに疑似的コーヒータイムになるかと思われます。
(公社)全国有料老人ホーム協会 参与 中村 正文