毎年敬老の日に向け公募している「シルバー川柳」に、5回目の今年は12,096句の応募があり、下記の20作品が入選しました。
(敬称略・順不同)
化粧品リフォーム詐欺と妻は言う
花井 耕一(神奈川県/61歳/無職)
年金にボーナス無いのと孫が聞き
吉村 明宏(埼玉県/66歳/無職)
年金と相談をして義理を欠き
吉田 稔(神奈川県/66歳/無職)
介護保険満期はいつかとついたずね
上野 真伸(東京都/55歳/会社員)
この動悸昔は恋で今病
朝倉 道子(埼玉県/63歳/主婦)
また一つプライド捨てて楽に生き
西川 敏雄(千葉県/75歳/無職)
老いて子に従うのにも一苦労
大西 福成(大阪府/82歳/団体役員)
かじられたスネで支える身の重さ
伊藤 登(愛知県/78歳/無職)
診察券五枚で週休二日制
松田 恵一(大阪府/81歳/無職)
自分史が増える追記で終わらない
髙谷 まさ(大阪府/75歳/無職)
見栄張って杖は要らぬと傘を持ち
澤 幸子(兵庫県/52歳/主婦)
病歴はなしで話の輪を外れ
中淵 史生(奈良県/69歳/無職)
老木は枯れたふりして新芽出し
山口みつ子(埼玉県/71歳/主婦)
老医師の過労気遣う老患者
高木 正明(埼玉県/69歳/無職)
持たされた携帯つまりは迷子札
宮川 孝志(埼玉県/64歳/会社員)
いびきより静かな方が気にかかり
田中多美子(三重県/52歳/主婦)
身内より心が通う介護の手
早川 吉彦(愛知県/48歳/会社員)
表札で生きる亭主の三回忌
黒﨑千鶴子(東京都/63歳/パート)
忘れえぬ人はいるけど名を忘れ
鳥居 和夫(愛知県/66歳/コピーライター)
年だもの最後だわねとまたハワイ
平山なな子(福岡県/54歳/自営業)
【応募状況】
応募総数は12,096作品で、前回の14,127に比べ2,031(14.4%)少なく、初めて前回を下回りました(初回3,375、2回目6,659、3回目11,019)。
応募者平均年齢は前回(69.3歳)に比べ3.6歳若い65.7歳となりました。これは、65歳以上の高齢層の応募が30.1%減る一方、40歳未満の中年・若年層で88.8%増加したことによるもので、高齢者や高齢社会に対する中年・若年層の関心が高まったことを示しています。なお、最年長応募者は98歳の女性(前回は101歳の男性)、最年少は9歳の女児(前回は7歳の女児)でした。
性別では、ほぼ男性55:女性45の割合でした。地域別にみると、全都道府県から応募がありました。従来同様、人口にほぼ比例して大都市圏が上位を占めていますが、今回は東日本の減少、西日本の増加がうかがえます。
◇題材比率に垣間みる高齢者の関心事
題材別比率で前回1位だった「第二の人生、自立、希望」が全体で2.7ポイント下げて2位に落ち、替わって「容姿(頭髪、皺、入歯、老眼)、しぐさ」が2.3ポイント上げてトップになりました。しかし、65歳以上の高齢者では「第二の人生…」がトップで、高齢者が依然として前向きであることに変わりはありません。この年代の応募が大幅に減った反面、「容姿、しぐさ」がトップだった40~64歳の高齢者予備軍、40歳未満の中年・若年層の応募が3割以上増えたことが大きく影響したものといえます。
「第二の人生…」につづいて減ったのが「お金、年金、遺産、遺言」(-0.9ポイント)で、逆に「容姿、しぐさ」につづいて増えたのが「物忘れ、認知症」(+2.2ポイント)、「恋、色気」(+1.6ポイント)でした。「おしゃれ」が0.6ポイント上げたことも考え合わせると、踊り場を脱したといわれる経済を反映して、生活に余裕が出てきたのかもしれません。
夫の定年を境に逆転する夫婦の立場、妻の外向化と夫の内向化、年齢とともにたくましく活発になる女性と悲哀さえ漂わせる男性など、「中高年層の女高男低」が相変らず強く感じられます。今回も「夫婦同床異夢、婦唱夫随」が1.5ポイント増加し、この傾向に拍車がかけられました。しかし、「夫婦愛」も0.3ポイント上げています。婦唱夫随ゆえの夫婦円満なのかも知れませんが。
なお、最近の出来事、世相、流行を反映したキーワードとしては、前年同様「年金」が最も多く、これまでの「オレオレ詐欺」に替わって「リフォーム詐欺」が目立ちました。高齢者への新たな脅威となっていることをうかがわせます。また、韓流ドラマの根強い人気を反映し、「ヨン様」も依然多く見られます。「リフォーム」以外にも、ことしの新語・流行語大賞を占うような「認知症」、「クールビズ」、「もったいない」、「想定内」などが新たに登場して目立っています。