毎年敬老の日に向け公募している「シルバー川柳」に、6回目の今年は7,466作品の応募があり、下記の20作品が入選しました。
(敬称略・順不同)
チョイワルもチョイヨボですネと妻が言う
新妻 常蔵(男性/京都府/59歳/紳士服仕立て)
老体に耐震補強か杖一本
伊東 惠子(女性/静岡県/58歳/主婦)
年金を親子でもらう家が増え
小泉 親種(男性/神奈川県/58歳/塾経営)
カードナシ。ケータイもナシ。被害ナシ
河田せき子(女性/愛知県/75歳/無職)
化粧品ムダだと妻にまだ言えず
金子 秀重(男性/岐阜県/55歳/会社員)
医者と妻急にやさしくなる不安
竹重 満夫(男性/山口県/72歳/無職)
あちこちの骨が鳴るなり古希古希と
中嶋 義秀(男性/千葉県/71歳/無職)
八十路越え大器晩成まだ成らず
中川 義秋(男性/愛知県/81歳/無職)
祖母の知恵教科書よりも役に立ち
谷口 潜風(男性/鳥取県/58歳/会社員)
デパートで買い物よりも椅子探し
渡辺 一雄(男性/東京都/30歳/会社員)
口喧嘩たまに勝っても待つ試練
黒﨑 忠純(男性/東京都/67歳/無職)
腹立ちを仏に聞かすひとり言
田中 貞子(女性/茨城県/84歳/元教員)
メモ帳のしまい場所にもメモが要る
宮川 孝志(男性/埼玉県/65歳/会社員)
ホームとは人間模様の万華鏡
木村 幸枝(女性/大分県/80歳/無職)
まっすぐに生きてきたのに腰まがる
石野 房江(女性/愛知県/72歳/農業)
人生の時間は減るのに暇が増え
北川 賢二(男性/大阪府/50歳/自営業)
デザートは昔ケーキで今くすり
和田 優子(女性/東京都/57歳/主婦)
定年で働き蜂からおじゃま虫
赤瀬 雅子(女性/愛媛県/60歳/自営業)
威張ってた上司地域で役立たず
中山 邦夫(男性/広島県/69歳/無職)
退職後犬の散歩で知る近所
梶田 美保(女性/埼玉県/51歳/主婦)
◇応募状況
応募総数は7,466作品で、前回の12,096に比べ4,630(38.3%)少なく、前回を大幅に下回りました(初回3,375、2回目6,659、3回目11,019、4回目14,127)。
応募者平均年齢は前回(65.7歳)に比べ1歳若い64.7歳となりました。これは、65歳以上の高齢層の応募比率が2.7ポイント減り、その分40~64歳の高齢者予備軍(+1.5ポイント)と40歳未満の中年・若年層(+1.2ポイント)が増えたことによるものです。なかでも50歳代が最も大きく(+3.6ポイント)伸びました。50代後半に達した団塊の世代が来年から定年を迎えることもあって、彼らが老後を身近に考えるようになっていることをうかがわせます。なお、応募者最年長は100歳の男性(前回は98歳の女性)、最年少は9歳の男児(前回は9歳の女児)でした。
性別では、およそ男性6・女性4の割合でした。地域別では、全都道府県から応募がありましたが、大都市圏が上位を占めています。今回はじめて愛知県からの応募数がトップになり、2位東京都、3位宮城県(前回トップの大阪府は5位に後退)の順でした。
◇題材比率に垣間みる高齢者の関心事
前回1位の座を「容姿(頭髪、皺、入歯、老眼)、しぐさ」に譲っていた「第二の人生、自立、希望」が2.6ポイント上げて返り咲きました。高齢者、高齢者予備軍が老後を前向きに考えていることを示しています。
2番目に増えたのが「お金、年金、遺産、遺言」(全体で+2.2ポイント、高齢者で+3.8ポイント)でした。細る年金、増税、医療費負担増による三重の老人いじめを嘆いた「世相、風刺」の増加(+1.0ポイント=4番目の増加率)とともに、高齢者に強い逆風が吹いていることを訴えています。経済が好転したにもかかわらず、「恋、色気」(-0.6ポイント)、「おしゃれ」(-0.2ポイント)、「旅行」(-0.1ポイント)が減るなど、高齢者は気を引き締め、財布のひもを締めているようです。「第二の人生、自立、希望」を押し上げたのも、裏返せば『こんな世の中じゃ、老後もがんばらなきゃ』ということではないでしょうか。
夫の定年を境に逆転する夫婦の立場、妻の外向化と夫の内向化、年齢とともにたくましく活発になる女性と悲哀さえ漂わせる男性など、これまで増えつづけていた「夫婦同床異夢、婦唱夫随」がはじめて減りました(-1.6ポイント)。定年後も『七人の敵と戦う夫とこれを支える妻』や『共働き』を続けなければならない世の中を反映したものかもしれません。
なお、最近の出来事、世相、流行を反映したキーワードとしては、前回以上に「年金」が目立ち、「振り込め詐欺」、「クールビズ」は減ったものの依然根強く残っています。今回新たに登場したものでは、「イナバウアー」、「ニート」、「もったいない」、「節約」、「チョイワル」、「ゼロ金利解除」などが目立っています。また、児童に対する凶悪犯罪の増加を反映し、登下校時の警戒見張りが高齢者の新たな地域活動になっていることを表す作品が多数ありました。