毎年敬老の日に向け公募している「シルバー川柳」に、7回目の今年は7,202作品の応募があり、下記の20作品が入選しました。
(敬称略・順不同)
とって見てやっぱり解らん年の功
藤井 大典(男性/福岡県/91歳/無職)
分割じゃ食ってはいけぬ離婚やめ
西村 忠士(男性/長野県/64歳/無職)
千の風きいて買おうか迷う墓
髙橋多美子(女性/北海道/46歳/主婦)
秋茄子のきらいな嫁で拍子ぬけ
坂野 文子(女性/埼玉県/80歳/無職)
その昔惚れた顔かと?目をこすり
福井アツ子(女性/北海道/76歳/主婦)
転んでは泣いてた子が言う「転ぶなよ」
河嶋 智子(女性/京都府/44歳/主婦)
街鏡そっと猫背の老い伸ばす
佐藤 久子(女性/石川県/69歳/主婦)
一日は長くて一年矢の如し
吉岡 純子(女性/大阪府/61歳/パート)
借りた辞書拡大鏡も添えてあり
山田 正恵(女性/東京都/75歳/無職)
無病では話題に困る老人会
井上 栄二(男性/千葉県/74歳/無職)
いたわりも耳が遠くてどなりごえ
淺羽きみゑ(女性/北海道/81歳/無職)
優先席座って行き先山歩き
遠矢 時子(女性/神奈川県/66歳/無職)
食べたこと忘れぬように持つ楊枝
田村 靖彦(男性/奈良県/54歳/会社員)
古希になお叱ってくれる母が居る
渡辺 良平(男性/奈良県/73歳/無職)
世辞言わぬデジタルカメラの解像度
赤羽ヒデ子(女性/東京都/61歳/主婦)
万歩計歩数のびるが距離のびず
田中 博美(男性/山口県/65歳/無職)
驚いた(惚)ホれると(惚)ボけるは同じ文字
原 好英(男性/静岡県/82歳/無職)
人格の格差広がる高齢者
岩中 幹夫(男性/岡山県/31歳/公務員)
定年後引き算ばかり上手くなり
大久保富士徳(男性/埼玉県/77歳/無職)
介護保険掛け捨てにする果報者
林 國春(男性/千葉県/75歳/医師)
◇応募状況
応募総数は7,202作品で、前回の7,466に比べ264(3.5%)減少しましたが、内容のある力作揃いでした。(初回3,375、2回目6,659、3回目11,019、4回目14,127、5回目12,069)。
応募者平均年齢は前回(64.7歳)に比べ1.3歳若い63.4歳となりました。これは、65歳以上の高齢者と40~64歳の高齢者予備軍の応募比率がそれぞれ4ポイント、0.5ポイント減り、その分40歳未満の中年・若年層(3.5ポイント)が増えたことによるものです。この傾向は前年につづくもので、高齢社会に対する若年層の関心が高まっていることをうかがわせます。なお、応募者最年長は102歳の男性(前回は100歳の男性)、最年少は13歳の女子中学生(前回は9歳の男児)でした。性別では、およそ男性6対女性4の割合でした。地域別では、全都道府県から応募がありましたが、大都市圏が上位を占めています。
◇題材比率に垣間みる高齢者の関心事
「容姿(頭髪・皺・入歯・老眼)・しぐさ」が3.5ポイント増の15.1%で1位となり、前回1位に返り咲いていた「第二の人生・自立・希望」は3.6ポイント減の10.2%で2位に後退しました。「第二の人生…」の後退は一昨年につづいて2度目ですが、前回は高齢者だけは「第二の人生…」がトップで前向きだったのに対し、今回はどの年代層でも「容姿・しぐさ」に抜かれています。2番目に増えたのが「物忘れ・認知症」(1.9ポイント増の6.3%)であることを考え合わせると、高齢層は自分の"老い"に対しての関心が非常に強いようです。
年金記録問題が発覚して連日新聞・テレビをにぎわせていた時期と川柳募集期間が重なりましたが、意外にも「お金・年金・遺産・遺言」、「世相・風刺」ともに比率を下げました(それぞれ2ポイント、0.2ポイントの減少)。さらに、「孤独・不安・諦念」や「隠居生活」などが比率を下げる一方、「おしゃれ」、「IT・若者文化」が比率を上げ、「旅行」や「恋・色気」がほぼ横ばいだったことから、逆風にもめげず依然プラス思考が強いようです。夫の定年を境に逆転する夫婦の立場、妻の外向化と夫の内向化、年齢とともにたくましく活発になる女性と悲哀さえ漂わせる男性などを表現した「夫婦同床異夢・婦唱夫随」は昨年はじめて減少しましたが、今回は増加に転じました(0.4ポイント)。これらを総合すると、肩身が狭くなりつつある男性の「負い目や逆風も自虐的に笑い飛ばし、妻に従いつつも、楽しく生きてやれ」と開き直っているさまがうかがえます。
なお、最近の出来事、世相、流行を反映したキーワードとしては、「年金」が最も多く、「振り込め詐欺」は減少傾向にあるものの依然根強く残っています。今回新たに登場したものでは、「千の風」、「メタボ」、「王子」などが目立ちました。4月から導入された離婚時の「年金分割制度」や年金記録問題が発覚した「社保庁」も題材に登場しました。