第11回目となります「シルバー川柳」に、ことしは9,441作品の応募をいただきました。各ホームの入居者にも投票をいただき、下記の20作品を入選作として選出しました。
◇入選作品
(敬称略・順不同)
お迎えはどこから来るのと孫が聞く
眞鍋ミチ子(女性/愛媛県/73歳/主婦)
これ大事あれも大事とゴミの部屋
川端 和子(女性/東京都/67歳/介護ヘルパー)
誕生日ローソク吹いて立ちくらみ
今津 茂(男性/大阪府/63歳/会社員)
振り返り犬が気遣う散歩道
森内奈穂子(女性/北海道/44歳/アルバイト)
未練ない言うが地震で先に逃げ
廣川 利雄(男性/千葉県/84歳/無職)
「いらっしゃい」孫を迎えて去る諭吉
上本 幸子(女性/大阪府/63歳/パート)
目には蚊を耳には蝉を飼っている
中村 利之(男性/大阪府/67歳/無職)
カード増え暗証番号裏に書き
石田るみ子(女性/兵庫県/59歳/地方公務員)
まだ生きるつもりで並ぶ宝くじ
酒井 具視(男性/東京都/36歳/会社員)
飲み代が酒から薬にかわる年
岡武 祐史(男性/滋賀県/72歳/会社役員)
「お年です」それが病気か田舎医者
松浦 宏守(男性/千葉県/83歳/無職)
ボランティア するもされるも 高齢者
合田 杉朗(男性/神奈川県/49歳/会社員)
歩こう会アルコール会と聞き違え
本田 満(男性/大阪府/66歳/無職)
なれそめを初めてきいた通夜の晩
中松 千尋(女性/鹿児島県/25歳/パート)
聴力の検査で測れぬ地獄耳
大沢 紀恵(女性/新潟県/71歳/主婦)
万歩計半分以上探しもの
工藤 光司(男性/大阪府/68歳/無職)
中身より字の大きさで選ぶ本
西村 嘉浩(男性/神奈川県/71歳/無職)
少ないが満額払う散髪代
林善 隣(男性/東京都/66歳/自営業)
若作り席をゆずられムダを知り
津村 信之(男性/東京都/71歳/無職)
入場料顔見て即座に割り引かれ
赤羽 慶正(男性/東京都/71歳/無職)
◇応募状況
応募総数は9,441作品で、前回の10,759に比べ1,318(12.3%)減りました(7回目7,202 / 8回目8,840 / 9回目10,558、過去最高は4回目の14,127)。
応募者平均年齢は前回(63.2歳)に比べ5.0歳若い58.2歳と最も若くなりました。これは、高齢者(65歳以上)の応募比率が10.6ポイント減り、若年層(40歳未満)の応募比率が10.9ポイント上昇したことによるものです。とくに20代(5.0ポイント)、30代(5.5ポイント)の伸びが大きく、高齢者や高齢社会に対する若年層の関心が深まりつつあることがうかがえます。応募者最年長は98歳男性(前回102歳女性)、最年少は3歳男児(前回7歳男児)でした。男女別では、前年に引き続き女性が比率を上げ、47.7%に増えました。地域別では、震災の被害にあった東北地方等を含む全都道府県から応募がありましたが、大都市圏が上位を占めています。
◇題材比率に垣間みる高齢者の関心事
自らの老いを笑い飛ばそうとする「容姿・しぐさ」(12.6%→14.8%、1位維持)と「物忘れ・認知症」(4位、5.2%→7.3%、6→4位)が比率・順位を上げる一方、「第二の人生・自立・希望」(12.5%→10.4%)は2位を維持したものの2.1ポイント下げ、「趣味・ペット・生甲斐」(7.6%→6.4%)も1.3ポイント下げて順位が3位から5位なりました。また、「おしゃれ」(1.5%→2.1%)は増えたものの、「恋・色気」(3.4%→2.6%)、IT・若者文化(2.3%→1.6%)、「旅行」(1.5%→1.2%)などが比率を下げました。東日本大震災後の生活意識の変化も伺えますが、一方で老いを笑い飛ばして憂さ晴らしをしたいと思っているのかもしれません。
また、家族関係の変化もみてとれます。ここ数年比率を減らしてきた「身内」(5.4%→5.5%)は比率を若干戻しましたが、順位は5位から7位に転落し、内容は年金や遺産に関連して詠むものがほとんどでした。また、「仲間・友情」(2.9%→1.9%、15→19位)も比率・順位ともに下げました。一方、「夫婦愛」(4.9%→5.5%、7→6位)と「夫婦同床異夢・婦唱夫随」(3.9%→4.2%、10→8位)は比率・順位ともに上げました。双方合わせると9.7%となりました。他方、「介護・ヘルパー」(1.4%→2.2%、21→17位)が比率・順位ともに急上昇していることが目を引きます。
総括すると、遠くに住む子・孫・兄弟やご近所・友人より、人生の伴侶が一番。支えあい、贅沢はせずとも夫婦仲良く生きて行こうね。困ったら介護サービスに頼ろうということになりそうです。
なお、最近の出来事・世相・流行を反映したキーワードとしては、引き続き「年金」が最も多く、「オレオレ(振り込め)詐欺」も根強く残っていますが、今回とくに目立ったのは「震災(地震・津波)」、「被災地(者)」、「原発(事故)」、「放射能」、「節電」、「熱中症」などで、東日本大震災→原発事故→電力不足の連鎖が被災地以外の高齢者にも暗い影を落としているようです。そのほか、「AKB」、「女子会」、「地デジ化」、「一定のめど」、「断捨離」なども新たに登場しています。
第1回~第10回の入選作はこちら【PDF 308KB】