第16回目となります「シルバー川柳」に、今年は8,876作品の応募をいただきました。各会員ホームの入居者約180名の投票をいただき、下記の20作品を入選作として選出しました。
◇入選作品
※敬称略・順不同 ★の作者名はペンネーム
ポックリと逝きたいくせに医者通い
堀江 正一(男性/栃木県/68歳/無職)
気が付けば母のとし超え我を知る
井上 親子(女性/山梨県/78歳/無職)
絵手紙でいい味出してる震える字
角森 玲子(女性/島根県/48歳/自営業)
「やめとくれ」ただの寝坊で脈とられ
くずれ荘の管理人(男性/大阪府/49歳/会社員)★
こんにちは思い出せずにさようなら
山本 芳子(女性/大阪府/73歳/主婦)
希望なし目標なくて自由あり
かつ子(女性/山形県/83歳/無職)★
あれよあれそれよそれよと答え出ず
毛利 勝(女性/愛媛県/81歳/主婦)
猫までが妻の真似して俺またぐ
見辺 千春(男性/東京都/69歳/契約社員)
クラス会それぞれ持病の専門医
荒木 貞一(男性/北海道/73歳/無職)
ボケもよい昨日のケンカもう忘れ
桑村 宗次(男性/岡山県/72歳/無職)
金よりも大事なものが無い老後
梶 政幸(男性/千葉県/51歳/自営業)
見栄と欲捨ててしまえば生き仏
原 好英(男性/静岡県/91歳/無職)
チンをして出すの忘れて冷蔵庫
山本 加代子(女性/岩手県/67歳/主婦)
金が要る息子の声だが電話切る
浜乙女(女性/神奈川県/72歳/主婦)★
飼犬が徘徊防止に付いて来る
石川 昇(男性/東京都/63歳/パート)
この歳で止めてどうする酒たばこ
永田 寿道(男性/岡山県/67歳/農業)
やっと立ち受話器を取れば電話切れ
井堀 雅子(女性/奈良県/63歳/無職)
ハグされてこわい私の骨密度
澄っ子ぐらし(女性/徳島県/41歳/会社員)★
五郎丸まねて念仏かと訊かれ
カバの妻(女性/北海道/55歳/パート)★
基地問題うちがもめるは墓地問題
松本 俊彦(男性/京都府/51歳/会社員)
◇応募状況
<応募総数>8,876作品
<応募者年齢>平均年齢:71.4歳 最年長:101歳(男性) 最年少:8歳(女児)
<応募者男女比>男性:57.7% 女性:41.5% 性別不明:0.8%
年代構成比において、65歳以上の応募が微減し(対前年-4.1%)、40~64歳の応募が微増しています。男女比では、男性が57.7%、女性41.5%と、昨年に比べ男性の割合が微増しています。40歳未満の応募者は全体の2.5%と少ないものの、シニア世代の様子を的確に表現した句が多く寄せられています。
◇題材の傾向と内容
・流行語と社会に敏感なシルバー世代
今回は「オリンピック」「五郎丸ポーズ」「パナマ文書」などの時事ネタが多く見られました。前回に引き続き「マイナンバー」「終活」「壁ドン」というキーワードも積極的に使われています。豊富な人生経験からエスプリの効いた作品が多く、「都知事問題」「基地問題」など社会に鋭く切り込む一方で、若者と同じように「スマホ」「ライン」を使いこなす、流行語と社会に敏感なシルバー世代の姿が浮かび上がってきます。
入選作:「五郎丸まねて念仏かと訊かれ」「基地問題うちがもめるは墓地問題」
・題材ランキング一位は「容姿・肉体・知力の衰え」。だけど明るく
全応募作の一割超が「容姿・肉体・知力の衰え」について詠まれたもの。老化に関する川柳はシルバー川柳の特徴と言えるでしょう。「認知症」「尿漏れ」など直接的に表現されており、ただ嘆くのではなく、老いと向き合いながら、笑いに変えて明るく生きる姿勢が感じられます。特に「物忘れ」についてはユニークな作品が数多く投稿されました。
入選作:「絵手紙でいい味出してる震える字」「こんにちは思い出せずにさようなら」「あれよあれそれよそれよと答え出ず」「ハグされてこわい私の骨密度」
・長寿社会。自身の長生きや老後の生活に戸惑いも
2015年度の平均寿命が過去最高を更新し、医療技術の進歩に伴って日本はますます長寿国になることが予想されていますが、シルバー川柳にも長寿に関する作品が多く寄せられました。思いがけない長生きや定年後の自由な時間への戸惑い、避けられない「死」に対する率直な気持ちが描かれており、注目されます。老後の生活は人それぞれですが、共通して年金を始めとするお金の問題への関心は高いようです。
入選作:「ポックリと逝きたいくせに医者通い」「気が付けば母のとし超え我を知る」「希望なし目標なくて自由あり」「金よりも大事なものが無い老後」
・家族の絆と微妙な関係
また定番テーマの「夫婦」ネタは三位、孫など「身内」ネタは四位と安定しています。長年連れ添い通じ合った夫婦の絆を歌い上げた作品が多数応募されました。孫ネタは相変わらず鉄板で、孫が可愛くて仕方がない気持ちが伝わってきます。一方で家族の微妙な関係性や悲哀を描いた作品も多く見られました。
入選作:「猫までが妻の真似して俺またぐ」「金が要る息子の声だが電話切る」
第1回~第15回の入選作はこちら【PDF 580KB】